AI搭載ローコードプラットフォームは、開発速度を加速させ、技術チームへの負荷を軽減し、オンプレミスやハイブリッド環境でも容易に導入可能な戦略的選択肢です。これは、日本企業にとって特に重要な存在です。なぜなら、デジタルトランスフォーメーションを推進する中で、技術人材不足、導入コストの課題(IPA、2023)、およびレガシーシステムの存在(経産省、2024)という3つの大きな壁に直面しているからです。
本記事では、2025年に注目されているAI搭載ローコードプラットフォームの概念を解説し、特におすすめしたい5つのプラットフォームを分析します。
1. AI搭載ローコードプラットフォームとは?
AI搭載ローコードプラットフォームとは、プログラミング知識がなくても、視覚的なドラッグ&ドロップ操作でインテリジェントなワークフローやアプリを構築できるツールです。AIや機械学習技術を統合しており、データ分析、意思決定、インテリジェントな対話処理などの複雑なタスクに対応できます。非技術者でも技術者でも活用でき、個人および企業の業務プロセスを最適化する力があります。
IDC Japan(2024)の調査によると、APAC地域で68%以上の企業がソフトウェアエンジニア不足に直面する一方で、社内AI導入ニーズが急増しています。そのため、AI搭載ローコードプラットフォームは、エラー検知・自動修正機能と合わせて、開発時間を最大60%、保守コストも大幅に削減する現実的な解決策として注目されています。
クラウド、オンプレミス、ハイブリッドの柔軟な導入モデルにより、既存インフラへの統合も容易です。特に日本では、企業の80%以上が企業内データの保護を優先しており、オンプレミスまたはハイブリッド展開は重要な選択肢となります。
つまり、AI搭載ローコードプラットフォームは開発を加速するだけでなく、技術人材不足の課題も解決します。誰でも使いやすく、業務プロセスのシンプル化を実現できる、まさにデジタル変革の核となるソリューションと見込まれています。
詳細はこちら:企業が毎月数千時間の無駄を防ぐには?業務プロセスへのAI導入・3つのステップ
2. AI搭載ローコードプラットフォーム 5選
2.1 n8n
n8nは、オープンソースの自動化プラットフォームであり、テクノロジーコミュニティから高い評価を受けているツールです。ビジュアルなドラッグ&ドロップ操作に加えて、各ステップ(ノード)にJavaScriptやPythonコードを直接組み込むことができ、複雑なロジックにも対応可能です。
画像出典:n8n
n8nが企業に注目される主な理由は以下の通りです:
・柔軟な導入オプション:オンプレミス環境にセルフホストしてデータ管理を徹底することも、n8n社提供のクラウド版を活用することも可能です。
・実行数ベースのコストモデル:ワークフローの実行回数に応じて課金されるため、処理ステップの多い業務でも費用を最適化できます。
・AIとのスムーズな統合:GPT、HuggingFace、Claudeなどと連携可能な2,000以上のテンプレートが用意されます。チャットボット構築、テキスト分析、自動コンテンツ生成などに活用可能。
・エンジニアフレンドリーな設計:直感的なUIに加え、デバッグ機能、リクエストヘッダー編集、Webhook作成、高度なAPI処理などの詳細設定が可能です。
n8nは、柔軟性とデータ主権の両立を求める中大企業に最適なAI搭載ローコードプラットフォームです。業務処理のスピード向上、統合コストの削減、データコントロール性の向上といった効果が期待されています。
2.2 Dify
n8nの柔軟性とは異なり、DifyはAIの力を積極的に活用し、業務処理をよりスマートかつ主体的に行う点で際立っています。ユーザーは、OpenAIのGPT、AnthropicのClaude、MetaのLlamaなどの大規模言語モデル(LLM)や、その他のオープンソースモデルを、数ステップのシンプルな操作で簡単に統合できます。そのため、自社でAIインフラを一から構築する必要がなく、
仮想アシスタントの構築、セマンティック解析、コンテンツの自動生成といったAI機能を迅速に導入可能となります。
画像出典:Dify
さらに、Difyは単なるLLM統合にとどまらず、日々の業務フローに即座に組み込めるAIアプリテンプレートも提供しています。
・社内ナレッジを活用したスマートチャットボット:RAG(検索拡張生成)技術により、社内情報をもとにFAQ対応や内部ヘルプデスクとして活用可能。
・2つの運用モードを明確に分離:
会話型(チャットボット):ユーザーとの対話を設計・トレーニング
ワークフロー型:AIエージェントが特定の要件を検知すると自動的にアクションを実行
・AIエージェントのシステム全体への統合:仮想アシスタントは、回答するだけでなく、API呼び出し・レポート生成・メール送信など、自動処理の各ステップも実行可能。
このように、多様なLLM統合とテンプレート機能を活かすことで、DifyはユーザーフレンドリーなAI搭載ローコードプラットフォームとして、企業がスピーディーにAIを業務に取り入れるのに最適な選択肢となっています。
2.3 Make
Makeも現在最も人気のあるローコードAIプラットフォームのひとつです。このプラットフォームは、直感的なワークフロー設計と操作のしやすさが特長で、1,500以上の一般的なアプリと接続できる点が大きな魅力です。非エンジニアから技術チームまで、幅広いユーザーに向けて、柔軟で拡張性のある自動化ツールを提供しています。
画像出典:Make
Makeが中小企業に選ばれる理由として、以下のポイントが挙げられます。
・Gmail、Notion、Slack、Airtable、Google Sheetsなど、1,500以上のアプリと簡単に統合し、ツール間のデータフローを一元管理。
・条件分岐(if – else)やエラー発生時の再試行(retry logic)、自動アラート送信など、業務ロジックに合わせたワークフローの細かなカスタマイズが可能。
・操作数に基づく柔軟な料金体系(オペレーションベース課金)を採用。ワークフロー数は無制限で、多数の小規模プロセスを頻繁に実行する企業に最適。
このように、Makeは「まずは小さく始めて徐々に自動化を拡張したい」「複数のシナリオを試したいがコストは抑えたい」という企業にとって、コスト管理とスケーラビリティを両立できる理想的なプラットフォームです。
2.4 activepieces
単なるドラッグ&ドロップの操作画面にとどまらず、AIエージェントとModel Context Protocol(MCP)を通じて高度に連携できるAI統合ローコードプラットフォームをお探しの企業には、activepiecesが最適な選択肢とされます。
MCPは、AIモデル(特にChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデル)と外部ツール・データ・サービスを1つの標準プロトコルで接続できるオープン仕様のプロトコルです。これにより、各AIやアプリケーションに個別の統合を構築する必要がなくなります。
画像出典:acticepieces
一般的なローコードAIツールが一部のAPI呼び出しやAIステップを追加するだけにとどまるのに対し、activepiecesは世界最大規模のMCPオープンソースエコシステムを構築しており、現在280以上のMCPサーバーが稼働しています。この基盤により、AIエージェントは多様なシステムにアクセスできるだけでなく、文脈に応じて意思決定・ソフトウェア操作・レスポンスを実行でき、まるで実在の社員のように機能します。
プラットフォームの魅力はこちらです。
・MCP形式のフローを作成・再利用可能。AIがシナリオやユーザーに応じたプロセスを自律的に起動・実行し、パーソナライズされた結果を返します。
・定型テンプレートに依存しない柔軟なワークフロー設計。企業の業務課題に合わせて、AIエージェントを内部システムと自在に連携できます。
・一元化されたインターフェースによるデータおよびアプリ連携で、AI導入・業務自動化のスピードを大幅に短縮します。
さらに、activepiecesはセキュリティ確保のためのセルフホスティング対応に加え、TypeScriptによるカスタムロジック開発やホットリロードにも対応。開発・検証サイクルの迅速化にも貢献します。自社の自動化システムを自らコントロールしたい中小企業・スタートアップにとって、有力な選択肢となるプラットフォームです。
2.5 Node-RED
Node-REDは、物理デバイス(IoT)アプリケーションとリアルタイムデータ処理に特化したローコードプラットフォームです。
このプラットフォームの最大の特徴は、MQTT、Modbus、OPC-UAなどの一般的なプロトコルを通じて、産業用デバイスやセンサー、IoTシステムとスムーズに接続できる点にあります。これにより、製造装置やシステムからリアルタイムでデータを収集し、監視・分析・反応を迅速に行うことが可能になります。
画像出典:Node-RED
Node-REDは、デバイスやAPI、ネットワークサービスとの接続をドラッグ&ドロップで簡単に実現できるユーザー体験を提供しますが、プラットフォームのコアにはAI機能は組み込まれていません。代わりに、拡張ノードを通じてAIとの連携が可能です。これはデータ処理とデバイス接続に特化した同プラットフォームの柔軟なアプローチと言われています。
さらに、Node-REDは以下のような強力な機能も備えています。
・リアルタイムのダッシュボード作成可能:センサーやIoTシステムからのデータを視覚的に表示し、直感的なモニタリングを実現
・主要クラウドサービスとの互換性:AWS IoT、Azure IoT Hub、Google Cloud IoTなどに対応しており、ハイブリッドおよびクラウドネイティブなソリューションにも柔軟に対応。
・複雑な論理処理に対応:条件分岐、リトライ、エラーハンドリング機能を備え、安定した実運用が可能。
総じて、デバイス接続と現場データ処理に強みを持つNode-REDは、製造業、ロジスティクス、スマート農業、またはリモート監視・制御ソリューションを開発するスタートアップ企業にとって、最適なプラットフォームと考えられます。
3. AI搭載ローコードプラットフォーム比較表
AI搭載ローコードプラットフォームが急速に進化する中、最適なツールを選ぶには、機能面だけでなく、導入目的、自社の技術力、そして柔軟性のニーズも考慮する必要があります。
以下は、代表的なAI搭載ローコードプラットフォーム5選を比較した表です。各ツールの強みやホスティング方式、価格モデル、適した企業像などを参考に、自社に最適なプラットフォーム選びにお役立てください。
プラットフォーム | 主な強み | AI統合機能 | ホスティング形式 | 料金モデル | 推奨企業 |
n8n | 高度なAPI制御、データの内部管理、複雑な処理ロジックに対応 | GPT、Claude、HuggingFaceなど | セルフホスト/クラウド | 実行数に応じて課金 | セキュリティ重視で複雑な業務プロセスを持つ中〜大規模企業 |
Make | 直感的なUI、1,500以上のSaaSと連携、運用が簡単 | プラグインによる基本的なAI連携 | クラウド | アクション数に応じて課金 | 技術リソースが限られる中小企業、迅速な導入が必要な企業 |
Dify | チャットボットやAIアシスタント、RAGなど文脈に応じたAIワークフロー構築 | LLMネイティブでAI機能が非常に強力、AIエージェント対応 | セルフホスト/クラウド | 無料(セルフホスト)、または従量課金 | 顧客対応や社内業務にすぐにAIを導入したい企業 |
activepieces | 多様なデータソースとの接続、AIエージェントのコード実装可能 | AIファースト、TypeScript対応 | クラウド/セルフホスト | 無料(セルフホスト)、有料プランあり | オープンソース志向で柔軟なAI構築を目指すスタートアップやテック企業 |
Node-RED | IoT機器接続、リアルタイムダッシュボード、産業モニタリング | 拡張ノードによるAI連携 | セルフホスト/エッジ/ハイブリッド | 無料 | 製造業、物流、スマート農業などの業界向け |
企業の皆さまがまだ自動化に不慣れで、何から始めればよいかわからない場合、n8nはワークフローの全体像を理解するための最初の一歩として最適オプションです。
n8nを使ったCVスクリーニングワークフローの作成方法はこちら:HR 2025:数百件の履歴書を数分で選別するAIワークフローの作り方
4. ローコードAIで業務効率化を目指すなら、ぜひ私たちにご相談ください
AI搭載ローコードプラットフォームの導入は、新たなソリューションの迅速な展開だけでなく、中長期的なコスト削減やリソース最適化にも大きく貢献します。しかし、効果的な導入のためには、社内要件を的確に把握するとともに、技術や運用環境に精通したパートナーとの連携が不可欠です。
Miichisoftでは、企業様向けにAI搭載ローコードプラットフォームの導入支援サービスを提供しています。特に「Dify」や「n8n」といった先進的なプラットフォームを中心に、業界特有のニーズに対応した柔軟なカスタマイズを行い、自社ドメインやオンプレミス環境への導入(self-hosted)もサポート。これにより、企業様は社内データを完全に管理し、パブリックなプラットフォーム利用時に生じるセキュリティリスクを回避できます。
当社は日本市場で150件以上のプロジェクトを成功に導いてきた実績があり、日本語とベトナム語のバイリンガルエンジニアが多数在籍。テクノロジーだけでなく、日本企業特有の業務プロセスや商習慣にも深い理解を持っています。
AI搭載ローコードプラットフォーム選定からPoC(概念実証)の導入まで、Miichisoftが貴社のローコードAI活用の第一歩を全力でサポートいたします。
5. 結論:企業のDXを加速するAI搭載ローコードプラットフォーム
AI搭載ローコードプラットフォームは、専門的な開発リソースに大きく依存せずに、企業のデジタル変革を加速させる戦略的ツールとして注目を集めています。各プラットフォームは、連携機能、セキュリティレベル、導入形態、コスト面などでそれぞれ異なる強みを持っています。
今回ご紹介した5つのAI搭載ローコードプラットフォームを比較すると、どのツールが最適かは、企業の業種、チーム体制、既存システム、運用目的によって異なることが明らかです。すべての企業に万能なツールは存在しません。
Miichisoftでは、AIローコード導入を検討中の企業様に向けて、課題分析からツール選定、実証導入、既存インフラ上での本格展開までを一気通貫でサポートいたします。データの完全な管理、コスト最適化、業務効率化の実現をお約束します。
ローコードAI導入にご関心がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。御社に最適な導入プランをご提案いたします。
よくある質問(FAQ)
Q1:n8nは無料で使えますか?
A:はい。n8nは、無料で使用できるセルフホスティング版(自己サーバーへの導入が可能で、データを完全に自社管理できる)と、実行回数に応じて課金されるn8n Cloud版の両方を提供しています。インフラ運用の手間をかけずに使いたい企業には、クラウド版が適しています。
Q2:DifyはGPTと連携できますか?
A:はい、可能です。Difyは、GPT(OpenAI)やClaude(Anthropic)、LLaMA(Meta)などの強力な言語モデル、さらにはオープンソースのAIモデルとも直接連携できます。直感的かつ柔軟なUIで、チャットボット、RAG(知識検索システム)、社内AIエージェントなどを簡単に構築できます。
Q3:activepiecesとn8nの違いは何ですか?
A:両方ともオープンソースの自動化プラットフォームですが、activepiecesはAIファーストのアプローチを採用しており、TypeScriptによるカスタム開発をサポートしているため、AIエージェントの高度なカスタマイズを求めるチームに向いています。一方、n8nはより広範なエコシステムを持ち、JavaScriptやPythonによる開発や、高度なAPI連携が求められる複雑な業務プロセスの自動化に適しています。