ここまで業務改善を行う理由として、混沌とした時代を生き残る組織に変革することが必要であるという点と、経営破綻したJALの再建という事例から、生き残る組織に変革するための3つの力を解説してきました。最終章となる今回は、具体的に生き抜く組織を作るためにどのような手順が必要なのか?を解説していきます。
以前、業務改善(主に業務効率化)は、刻々と変化する世の中の状況に耐えうる組織を作るための、人と時間を生み出す手段であると言いました。この人と時間を生み出すことで、JALの事例であげたような組織全体の意識改革や企業文化の変革へそのリソースを注力することができます。では、どのように業務効率化を進めるべきなのでしょうか。
1. 業務分析から課題と解決策を導き出す
まず、必要となるのは現在の事業の業務分析です。業務分析は、事業がどのように回っているのかをヒト・モノ・カネの視点で詳細に把握することが根幹にありますが、大事なのはそこから課題を言語化していくことにあります。課題を言語化することで、その課題をどう解決していくべきかを考えることができるからです。
例えば、最近話題になったコロナ感染者の全数把握を例にすると、課題としては「すべての患者の名前や発症日、連絡先などを保健所に報告する必要があった」ことが指摘されていましたが、一方で感染者の情報把握・管理支援システムである「HER-SYS(ハーシス)」への入力項目が多く、その作業に相当な労力が必要なことも伝えられています。
この場合、解決策としては2つ考えられ、一方は政府が取った「65歳以上の高齢者や入院が必要な人などに限定する」という方法、もう一方は「入力の手間を最小限にする方法」です。医療機関としては、データを「HER-SYS」に入力するというのは本来注力すべき仕事ではないため、理想は「65歳以上の高齢者や入院が必要な人などに限定する」ことに加えて「入力の手間を最小限にする方法」も取り入れて、労力と時間を削減することになります。65歳以上に限定することは、単純に入力数が減るだけなので、そこで準備が必要な設備等はありません。
では入力の手間を省くにはどうすればよいでしょうか?考えられるのは、患者が名前や症状など記入する用紙をスマートフォンで入力するような仕様に変更することであったり、マイナンバーカードによるICデータの読み取り、紙を使う方式であったとしても情報が記入された用紙のスキャンとOCRによる自動的なデータ化、などではないでしょうか。医療制度や法律による導入ハードルの検討については本内容の主旨から外れますので割愛しますが、テクノロジーを駆使して入力の手間を極限まで排除してあげることで、患者数の把握という目的を維持しつつ、労力と時間を最小限に抑えることが可能になります。
今述べた「コロナ感染者数の全数把握」の例では、「入力件数が多すぎること」と「入力自体に時間と手間がかかる」というのが課題となり、「65歳以上の高齢者や入院が必要な人などに入力を限定する」ことで前者の課題を、「入力の手間を最小限にする」ことで後者の課題を解決するという方針を描くことができました。
2. ITベンダーとのコミュニケーションが大きな障壁
いま話したように、人と時間を生み出すためには、事業の業務分析により、今現在対峙している状況から課題と解決策を導き出すことが必要となり、解決策の多くはテクノロジーの利用が不可欠となります。
つまり、変革のための業務改善(主に業務効率化)における手順とは、大まかに言うと以下のようになります。
- 自社の業務を分析する
- 分析結果から課題と解決策を検討する
- テクノロジーにより課題を解決する
そして、上記にある1.と2.の部分は業務改善コンサルタントの仕事であり、3.の部分はシステム開発会社などITベンダーの仕事なのです。
しかしながら、上記1.2.と3.の間には大きな障壁があります。
通常、1.2.は「要件定義」にあたる部分とされ、3.は「システム開発」や「ツール導入」のように表現されます。この「要件定義」と「システム開発」&「ツール導入」の間には「ユーザーとなる企業が正確に欲しいものを伝え、ITベンダーがきちんとそれを理解する」というコミュニケーションが発生します。
このコミュニケーションに失敗すると、希望通りの機能が満たされていなかったり、必要のないツールに費用を払い続けるような事態に発展します。そのような事態を防ぐため、大手企業では自社でエンジニアを抱えて企画と開発をシームレスに進めようという動きが見られますが、そこまで資金力がない中小企業では、必ずこのコミュニケーションの壁に直面すると言えるでしょう。
実際に筆者も20年以上システム開発会社に従事してきましたが、このコミュニケーションの障壁によってシステム導入後も業務が改善しないという状況を何度も見てきました。この事態を打開するには、ITベンダーと連携して密接なコミュニケーションを取り、業務改善の観点から目的や課題、解決策に至るまで詳細にユーザー企業の担当者と一緒に詰めて要件定義を明確にできるブリッジ役の存在が必要不可欠です。
3. まとめ
3回に渡り解説してきました「業務改善」についてまとめると以下のようになります。
- 業務改善の最終目的は、(変化の時代に生き残る)サスティナブルな組織に生まれ変わることである。
- 生き残る組織に生まれ変わるには、企業文化の変革が必要である。
- 企業文化の変革には、人と時間のリソースが必要となる。
- 人と時間のリソースは、業務改善(主に業務効率化)により取得できる。
- 業務改善(主に業務効率化)を進めるには、最初に業務分析で課題と解決策を導き出す。
- 課題の解決策としてテクノロジーが必要になる。
- テクノロジーを効果的に導入するには、ITベンダーとの綿密なコミュニケーションが必要になる。
- ITベンダーとの綿密なコミュニケーションには、ブリッジ役となる人材が必要不可欠である。
4. 要件定義からシステム開発までシームレスに提供
筆者が代表を務める株式会社 業務の改善では、Miichisoft と連携して皆さんの会社のブリッジ役を担っていきます。業務改善コンサルタントとしての 株式会社 業務の改善 と、ITベンダーとしての Miichisoft が手を組むことにより、人と時間を生み出すための価値あるシステムを提供することができ、皆さんの会社がその先の企業文化の変革に注力することで、変化の時代に生き残るための組織、つまりサスティナブルな企業へ生まれ変わることができると信じています。
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