AIチャットボットは、低コストで導入できること、24時間稼働、組織規模に応じて拡張しやすいことから、企業の業務運営や管理のあり方を大きく変えています。導入に関する調査によると、B2B企業の約58%、従業員5,000人以上の企業の60%以上が、すでに業務にチャットボットを活用しています。特に近年では、HRやバックオフィス部門を中心に、情報検索、オンボーディング、定型的な問い合わせ対応などでの活用が急速に広がっています。
本記事では、Dify社内FAQ チャットボット構築の方法をわかりやすく解説します。
Difyは、ノーコードで社内ナレッジと連携したQ&A型チャットボットを構築できるプラットフォームです。プログラミング不要で、短期間・高いセキュリティを保ちながら、企業向けチャットボットを導入できます。
なぜ企業に社内チャットボットが必要なのか
時間の浪費と生産性の低下
企業環境では、社員が日常業務のために社内情報の検索に多くの時間を費やしています。McKinseyのレポートによると、社員は1日平均1.8時間(週約9.3時間)を情報検索に使っているとされています。
また、HRやIT部門に関する調査・ケーススタディでは、問い合わせ全体の約60~75%が、すでに社内資料に存在する繰り返しの質問であることが分かっています。情報はあるものの、社員自身が必要な情報にたどり着けないことが大きな課題です。
こうした課題に対し、社内チャットボット構築は、情報検索の効率化と業務負荷の軽減に有効な手段となります。
オンボーディング・教育コストの増加
オンボーディングや研修にかかるコストが高くなる主な要因は、新入社員へのサポートにおける時間とリソースの無駄です。
企業研修に関する多くの研究では、学習者は1時間後に約50%、1週間後には最大90%の内容を忘れてしまう可能性があると報告されています。 これは、19世紀にHermann Ebbinghausが提唱した忘却曲線とも一致しています。
その結果、HR/L&Dや社内研修担当者は、基本的な質問への対応を何度も繰り返す必要があり、研修全体の効率低下につながっています。
社内ナレッジの分散
多くの企業では、社内ナレッジがメール、Google Drive、Slack、Notion、各種業務システムなど、複数のプラットフォームに分散しています。その結果、社員は日常業務に必要な情報を迅速に見つけることが難しい状況にあります。
また、重要な専門知識が特定の個人に依存しているケースも少なくありません。その場合、担当者の退職や異動により、ナレッジが失われるリスクが高まります。
さらに、情報が複数の人やチャネルを介して共有されることで、情報の不整合が発生しやすくなります。これは、業務プロセスや社内ルールの運用において、混乱や誤解を招く要因となります。
こうした課題に対しても、社内チャットボット構築は、ナレッジの一元化と情報アクセスの標準化に有効です。
Dify社内FAQ チャットボット構築:企業課題を解決するアプローチ
社内チャットボットとは、企業内で利用されるバーチャルアシスタントです。社員は、公式データに基づいて、業務プロセス、社内ルール、各種ドキュメント、業務マニュアルなどを対話形式で質問・確認できます。
・適切に社内チャットボット構築および導入を行うことで、以下の効果が期待できます。業務プロセス・社内ルール・資料に関する質問に24時間365日即時対応
・社内ナレッジを単一のアクセスポイントに集約
・HR/IT/総務部門の負荷を軽減し、付加価値の高い業務に集中可能
・公式データに基づく情報提供により、情報の一貫性と最新性を担保
・オンボーディングを高速化し、新入社員の自立と早期定着を支援
Dify 社内FAQ チャットボット構築は、多くの企業にとって最適な選択肢です。Difyは、オープンソースのノーコードプラットフォームとして、GPT-4、Claude、Geminiなどの主要AIモデルと社内ナレッジを連携できます。これにより、企業の業務や情報を理解した実用的なAIアシスタントを構築できます。
※詳しくはこちら:Difyとは何か?主な機能と導入メリットを詳しく解説
MiichisoftがDifyで構築した社内チャットボットのデモ
開始前に準備すべきこと
Dify 社内FAQ チャットボット構築を始める前に、資料とデータの事前準備が最も重要なポイントです。チャットボットの品質は、学習させる情報の質と量に大きく左右されます。
十分に整理されたナレッジがあってこそ、実用的で信頼できる社内チャットボットを構築できます。
【対応ファイル形式】
Difyは、一般的に利用されている多様なドキュメント形式に対応しています。
・テキスト系:PDF、DOCX、TXT、Markdown
・データ系:CSV、Excel、JSON
・プレゼン資料:PPTX、RTF
・Web形式:HTML、XML
既存の社内資料を、そのまま活用できる点も大きな特長です。
【事前に準備すべきコンテンツ】
Dify 社内FAQ チャットボット構築にあたって、チャットボットのナレッジベースとなる資料を整理・集約する必要があります。
・業務プロセス・SOP(標準業務手順):各部門の業務フロー、社内システムの利用方法、日常業務のチェックリストなど。
・社内ルール・規程:休暇申請や勤怠管理、リモートワーク規程、福利厚生、行動規範や企業文化に関する内容。
・研修・教育資料:会社・製品紹介、職種別の専門知識、オンボーディング資料は特に丁寧に準備します。
・FAQ(よくある質問) :社員から頻繁に寄せられる質問、代表的なトラブル対応、各部門の連絡先情報。
・製品・サービス資料:製品仕様、料金体系、各種ポリシー、導入事例や成功事例。特に営業・カスタマーサポート部門での活用に効果的です。
【最適化のポイント】
テーマ別に整理すること。
100ページを超える1つの巨大なファイルを使うのではなく、テーマごとに複数のファイルへ分割することをおすすめします。 例: 「人事」「製品」「ITサポート」「営業プロセス」など。
この方法により、
・ナレッジ管理が容易になる
・後からの更新・メンテナンスがしやすくなる
・社内チャットボット構築時の精度向上につながる
といったメリットがあります。
データをDifyに登録する前に、以下を必ず確認すること。
・機密情報、パスワード、個人情報を削除する
・不要なメールアドレスや電話番号を除外する
・古くなった情報を最新の内容に更新する
・フォーマットや表記を統一する
こうした事前整理を行うことで、安全性と回答精度の高い社内チャットボットを実現できます。
Dify 社内FAQ チャットボット構築7ステップ
ステップ1:アカウント登録と初期設定
【Difyアカウントの登録】
Difyでは、企業の要件に応じて2つの導入方法を選択できます。
・Dify Cloud:初めて利用する企業に最もおすすめの選択肢です。インフラ構築や運用・保守はすべてDify側が対応します。利用者は、チャットボットの設計やコンテンツ作成に集中できます。
・セルフホスト(自社運用) :データ管理やセキュリティ要件が厳しい企業に適した方式です。Difyを自社サーバー(オンプレミス/プライベートクラウド)に導入することで、 データを社内システム外に出さずに運用できます。
※関連記事:Dify CloudとDifyセルフホストの比較:自社に最適な導入方式はどちらか?
【LLM用APIキーの設定】
社内チャットボット構築における次のステップは、AIモデルと連携するためのAPIキー設定です。 Difyは、以下のような主要なAIプロバイダーと幅広く互換性があります。
・OpenAI
・Anthropic
・Azure OpenAI
・Google など
利用目的やセキュリティ要件に応じて、適切なAIモデルを選択・接続できます。
【ダッシュボードの基本構成を理解する】
Difyの管理画面は、直感的で使いやすいUIが特長です。主に以下のセクションで構成されています。
・探索:コミュニティやワークスペースで公開されているアプリ・パブリックボットを閲覧・利用できます。参考事例や検証用途に適しています。
・スタジオ:アプリケーションの作成・編集・管理を行う中心的な画面です。
・ナレッジ :ナレッジベース管理用のセクションです。 新規作成、ドキュメントのアップロード、チャンク/インデックス設定、処理状況の確認が可能です。
・ツール:APIツール、モデレーション、コードベース拡張など、各種ツール・拡張機能を管理します。

ステップ2:ナレッジベースの作成
【ナレッジの作成とアクセス】
チャットボット用のナレッジベース作成が必須です。 ダッシュボード左側のメニューからナレッジを選択し、ナレッジ作成をクリックします。
ナレッジベースには、後から管理・検索しやすい名称を設定します。 例:「貴社名_賞罰規程_2026」
【ドキュメントのアップロード 】
ファイル追加をクリックするか、ファイルをドラッグ&ドロップしてアップロードします。 Difyは一括アップロードに対応しているため、複数ファイルを同時に登録できます。
【チャンク設定】
チャンク設定では、以下のいずれかを選択します。
・汎用:ドキュメントを均等なサイズで分割します。設定がシンプルで、初めて利用する場合に適しています。
・親子チャンク:検索には子チャンクを使用し、回答時には親チャンクで全文脈を返します。章構成が多い長文資料に適した方式です。
チャンクプレビューを使って、分割結果を事前に確認し、必要に応じて調整できます。

【インデックス方式の選択】
インデックス方式では、次の2つから選択します。
- 高品質:埋め込みモデルを用いて内容をベクトル化します。意味検索(セマンティック検索)に対応し、高精度な社内チャットボットに推奨されます。
- 経済的:各チャンクにつき10個のキーワードを使用します。トークン消費は抑えられますが、キーワード検索のみとなり精度は低くなります。
【検索設定】
経済的を選択した場合、検索設定 でInverted Indexを利用できます。
- Inverted Indexは、検索エンジンと同様に、キーワードを含むチャンクを高速に検索する仕組みです。
- トップK: 1つの質問に対して返す関連チャンク数を指定します。デフォルトは3です。 ドキュメントが細かく分割されている場合は、5~8に増やすことも検討できます。

設定が完了したら、「保存して処理」をクリックし、Difyによるドキュメント処理を開始します。
ステップ3:新しい社内チャットボットの作成
【アプリタイプの選択 】
スタジオに移動し、「最初から作成」を選択します。以下の4つのアプリタイプが表示されます。
・チャットフロー:複数ステップの会話ワークフローを設計できます。処理フローが複雑なユースケースに適しています。
・チャットボット:シンプルな単一構成のチャットボットです。一般的なQ&A用途に最適です。
・エージェント:ツールを利用し、アクションを実行できる高度なチャットボットです。
・テキストジェネレーター:記事作成、要約、分類、翻訳、表記統一など、テキスト生成タスクに特化しています。
Dify 社内FAQ チャットボット構築では、多くの場合チャットボットが最も適した選択肢です。処理フローがより複雑な場合は、チャットフローやエージェントの利用も検討できます。
【名前と説明の設定 】
チャットボットには、 目的が分かりやすく、覚えやすい名称を付けます。
例:「人事部 アシスタント」 、「IT サポートボット」 、「社内アシスタント」
説明欄には、チャットボットの役割を簡潔に記載します。
例: 「社内の賞罰規程や人事プロセスに関する情報を提供するチャットボット」
後からアプリが増えても管理しやすくなります。

ステップ4:社内チャットボット用プロンプトと指示の設定
【チャットボットのプロンプト(指示文)を入力する】
チャットボットのオーケストレーション画面にあるプロンプト欄に、 チャットボット向けの指示文を入力します。プロンプト内では、 口調や対応スタイルについて1~2文で指定することも可能です。
例: 「親しみやすく、客観的なトーンを保ち、社員に対して具体的な解決策を提示すること。」
プロンプトの例 :
「あなたは、ABC社の社内向けAIアシスタントです。 以下の分野について、社員をサポートしてください。
・人事ポリシーおよび社内規程
・業務プロセスおよびSOP
・製品・サービスに関する質問
・ITおよび基本的な技術サポート
動作ルール:
・回答は常に日本語で、分かりやすく、丁寧に行う
・提供された社内資料の内容のみを根拠に回答する
・情報が見つからない場合は、「該当する情報は資料内に見つかりませんでした。 [該当部署]までお問い合わせください。」と正直に伝える
・可能な場合は、参照元の資料を明示する
・質問内容が不明確な場合は、確認の質問を行う 」

※今すぐダウンロード: Dify 社内FAQ チャットボットプロンプト集
【その他の主要設定項目】
・変数:プロンプトやメッセージ内で再利用可能な変数を定義できます。
・ナレッジ:チャットボットが参照する社内ナレッジを有効化するセクションです。
・ビージョン:モデルが対応している場合、画像読み取り機能を有効/無効にできます。 画像をアップロードして分析するユースケースで利用します。
ステップ5:社内チャットボットとナレッジベースの連携
チャットボットのオーケストレーションタブを開き、下部にあるナレッジセクションまでスクロールします。追加をクリックすると、参照する知識を選択画面が表示されます。 ここで、ステップ2で作成したナレッジベースを選択し、追加をクリックします。この画面では、設定されているインデックス方式(HQ・VECTOR/HQ・HYBRID/経済的 など)も確認できます。
この設定により、チャットボットに送信された質問は、選択したナレッジベースの内容を参照して回答できるようになります。

右側のデバッグ & プレビューパネルを使用して、想定される質問を入力し、チャットボットが資料内容に基づいて正しく回答するかを確認します。
以下のような場合は、設定を調整してください。
・資料に情報があるのに回答できない場合
・トップKの値を増やす
・ナレッジのチャンク設定やインデックス設定を再確認する
・回答が的外れな場合
・トップKを減らす
・チャットボットに紐づける ナレッジベースの範囲を絞る
このテスト工程を通じて、精度の高い社内チャットボット構築につながります。

ステップ6:社内チャットボットのテストとデプロイ
【約30問の想定質問でテストする】
プレビュータブを開き、事前に用意した約30問の質問リストを1つずつ入力して確認します。
【略語・カジュアルな質問でテストする】
実際の社員は、教科書どおりの文章で質問するとは限りません。略語やカジュアルな表現でも、正しく理解・回答できるかを確認します。
正しく回答できない場合は、
・プロンプトを調整する
・スコア閾値を下げる
といった対応を行います。
【複数ユーザーでテストする】
異なる部門から5~7名を招き、2~3日間テストしてもらいます。以下の観点でフィードバックを収集します。
・質問に対して正しく回答できているか
・回答は分かりやすいか
・回答できない質問はあったか
・改善してほしい点は何か
【デバッグと調整】
テスト結果をもとに、設定を見直します。
・「分かりません」と頻繁に返す場合
・スコア閾値を0.65まで下げる
・トップKを6に増やす
・誤った回答が多い場合
・元となる資料を再確認し、内容を更新・明確化する
・回答が冗長な場合
・max tokensを減らす
・プロンプトに「簡潔に回答する」という指示を追加する
・省略表記(ベトナム語の無アクセント表記など)を理解しない場合
・プロンプトに具体例を追加する
【公開】
品質に問題がなければ、公開をクリックし、適切な展開方法を選択します。 これで、Dify 社内FAQ チャットボットは完了です。
Difyで社内チャットボットを構築する際の高度な機能
ワークフローおよび外部ツールとの連携
Difyでは、ワークフローや各種ツールを連携させることで、社内チャットボットが実際のアクションを実行できるようになります。例えば、社員からの不具合報告を受け取った際に Jiraへ自動でチケットを作成したり、Gmail APIを通じて通知メールを送信したり、Google Sheetsから情報を参照したり、社内APIを呼び出して注文状況を確認するといったことが可能です。
設定方法としては、エージェントモードまたはワークフローに切り替えたうえで、Difyのマーケットプレイスからツールを追加する、もしくは独自のカスタムツールを作成します。その後、どの条件でどのツールを使用するかをプロンプト内で明確に定義することで、チャットボットは適切なタイミングでツールを活用できるようになります。
複数のナレッジベースを活用する
実務では、複数の情報ソースを横断的に参照する必要があるケースも少なくありません。例えば、ナレッジベース 1に人事関連ドキュメント、ナレッジベース 2に技術資料、ナレッジベース 3に製品情報を格納する、といった構成が考えられます。
Difyのチャットボットは、これら複数のナレッジベースを同時に検索し、質問内容に応じて最も適切な情報源から最適な回答を生成します。
これにより、部門横断で活用できる高精度な社内チャットボットを構築することが可能です。
マルチターン会話の設定
マルチターン会話を有効にすることで、チャットボットは会話の文脈を保持し、より自然な対話体験を提供できるようになります。例えば、ユーザーが「休暇申請の手続きは何ですか?」と質問した際に、ボットが詳細な説明を返します。
その後、ユーザーが「申請は何日前までに提出すればよいですか?」と続けて質問した場合でも、「申請」が休暇申請を指していることを理解し、ユーザーが改めて説明しなくても適切な回答を行います。 このように、マルチターン会話は社内チャットボットにおいて、問い合わせ対応の効率化とユーザー体験の向上に大きく貢献します。
情報ソースの引用・表示
回答に情報の出典を明示することで、チャットボットの信頼性は大きく向上します。単に回答を返すだけでなく、例えば次のような形で提示することが可能です。
「社内規程(2024年版 社員ハンドブック・5ページ)によると、年間の有給休暇日数は12日です。」
さらに、元となるドキュメントへのリンクを併せて表示することもできます。 この機能を有効にするには、設定画面で 引用文献 をオンにし、あわせてプロント内で「可能な限り情報ソースを引用して回答する」よう指示を追加してください。
【導入事例】Difyを活用した社内チャットボットの成功ケース
① SaaS企業向け Dify Enterprise ナレッジアシスタント
あるSaaSプロバイダーでは、Confluence、SharePoint、個別のPDFファイルなどに分散していた社内ドキュメントが原因で、情報検索に多くの時間がかかるという課題を抱えていました。
この課題を解決するため、同社はDifyを活用し、 Dify Enterprise を構築しました。
すべての社内資料を一元的にチャットボットへ統合することで、社員は自然言語による質問だけで必要な情報を検索・取得できるようになりました。
導入後の成果は以下の通りです。
・社内情報の検索時間を 65%削減
・FAQに関する初回応答時間を72%短縮
・全体の 38%の問い合わせがチャットボットによるセルフサービスで完結
・85%の社員が週1回以上チャットボットを利用
これらの結果から、Difyによる社内チャットボットは、業務効率の向上だけでなく、組織全体での高い定着率(ユーザー受容度)を実現していることが分かります。
② ITヘルプデスク・社内技術サポート向けチャットボット
ID Europeは、Difyを活用して社内ITヘルプデスクの自動化チャットボットを構築しました。
このチャットボットは、以下のようなITサポート業務を担っています。
・よくあるITトラブルへの回答
・アカウントのリセット手順の案内
・技術マニュアルの検索
・問い合わせ内容に応じたチケットの自動分類
・多言語対応によるグローバル社員サポート
日本の製造業向けプロジェクトでは、IT関連の問い合わせ件数が650件から370件へと57%削減されました。また、別の企業では、1日あたり約300件の問い合わせをチャットボットが自動対応し、ITチームの手作業による対応工数を最大90%削減することに成功しています。
③ 営業チーム向け Enterprise ナレッジベース
White Guiは、Dify上でRAG(検索拡張生成)を活用したエンタープライズレベルのナレッジベースを構築し、営業および入札(Bid)チームを支援しています。
本システムでは、以下のような情報をすべて一元管理し、社内チャットボットから検索可能にしています。
・会社紹介資料・実績資料
・技術ドキュメント
・財務・価格関連情報
導入後、チャットボットの回答精度は80%以上を達成し、提案書・入札資料作成の効率が約80%向上しました。さらに、顧客からの質問対応において、特定のベテラン社員や専門家への依存度を大幅に低減する効果も確認されています。
Difyで社内チャットボットを構築する際によくある課題と対策
① ボットが誤った回答や事実と異なる情報を返す
これは、Difyを用いて社内チャットボットを構築する際に最も頻繁に発生する問題の一つです。主な原因としては、以下が挙げられます。
・ナレッジベース内の資料に必要な情報が不足している
・スコア閾値が低すぎるため、関連性の低い情報を取得してしまう
・プロンプトで「資料に基づいてのみ回答する」という制約が明確に定義されていない
【解決提案】
まず、チャットボットが参照する資料に、質問に対する情報が十分に含まれているかを確認してください。
情報が存在する場合は、スコア閾値を0.75以上に引き上げ、関連性の高いチャンクのみを取得するよう調整します。
さらに重要なのが、プロンプトへの明確なルール追加です。例えば、以下のような指示を必ず含めることを推奨します。
「重要:必ず提供された資料の内容のみに基づいて回答すること。推測や事実に基づかない回答は禁止する。
該当する情報が見つからない場合は、「資料内に該当情報が見つかりません」と明確に回答すること。 」
このように制約を明示することで、ハルシネーションの発生を大幅に抑制できます。
② ボットが「分かりません」と回答してしまう(資料に情報が存在する場合)
この問題は主に、スコア閾値が高すぎる、質問の表現が資料内の記載と大きく異なる、または チャンクサイズが小さすぎて情報の文脈が分断されていることが原因で発生します。
【解決提案】
まず、スコア閾値を 0.6~0.7 に引き下げ、検索時の柔軟性を高めます。次に、同じ質問を異なる表現で入力し、言い回しの違いが検索結果に影響していないかを確認します。
また、チャンクサイズが小さすぎる場合は、800~1,000語程度に拡大し、十分な文脈が保持されるよう調整してください。最後に、ナレッジベース 上で該当ドキュメントが正しくインデックスされているかを必ず確認しましょう。
③ドキュメントをアップロードできない
この問題は、ファイルサイズが大きすぎる(Cloud版では15MB超)、対応していないファイル形式、または ファイル自体の破損や文字コードの問題が原因で発生することがあります。
【解決提案】
PDFファイルの場合は、オンラインツールを利用して圧縮し、ファイルサイズを削減してください。必要に応じて、.docx → .pdf、.xlsx → .csv など、別の形式へ変換するのも有効です。
また、別のアプリケーションでファイルを開き、ファイル自体が破損していないかを確認しましょう。複数ファイルの一括アップロードで問題が発生する場合は、1ファイルずつアップロードして、エラーの原因となるファイルを特定してください。
④ ボットの回答スタイルを変更したい場合
Dify で社内チャットボットを構築する場合、回答スタイルはプロンプトを調整するだけで簡単に制御できます。用途に応じて、以下のように指示を記述してください。
【フレンドリーなスタイルにしたい場合】
プロンプト例:
「同僚として親しみやすくサポートするように回答してください。
『あなた』『私』といったカジュアルな表現を使い、適切な場合は絵文字も使用してください。
例:『こんにちは!パスワードのリセット方法を一緒に確認しましょう』」
【プロフェッショナルなスタイルにしたい場合】
プロンプト例:
「丁寧かつ正式な文体で回答してください。
『貴社』『ご担当者様』『〜していただく』『〜ください』などの敬語表現を使用し、絵文字は使用しないでください。
例:『ご担当者様、休暇申請手続きを行うには、以下の手順をご確認ください。』」
【簡潔なスタイルにしたい場合】
プロンプト例:
「簡潔かつ要点のみを回答してください。
箇条書きを使用し、1回の回答は最大5文までとしてください。」
⑤ ボットが英語、または複数言語で回答してしまう場合
この問題は、プロンプト内で回答言語を明示していないことが原因で発生することがほとんどです。
【解決提案】
「【必須】質問が英語であっても、必ず日本語で回答してください。」
これにより、ボットは回答言語のルールを明確に理解し、意図しない言語混在を防ぐことができます。
⑥ チャットボットの応答が遅い場合
応答速度が遅い場合、いくつかの設定を調整することで改善できるケースが多くあります。
まず、使用する LLM を見直してください。GPT-4 ではなく GPT-3.5 などの軽量モデルに切り替えることで、レスポンス速度を大幅に向上させることができます。
次に、トップK の値を 2~3 に下げることで、検索・生成時の処理負荷を軽減できます。
あわせて、max_tokens を 500~800 程度に制限すると、回答生成にかかる時間を短縮できます。
また、rerank モデルを有効にしている場合は無効化してください。Rerank は精度向上に有効ですが、速度面ではボトルネックになることがあります。
それでも改善しない場合は、ネットワーク接続状況を確認し、最終的には API プロバイダー側の遅延や負荷が原因である可能性も考慮する必要があります。
Miichisoft、企業向け Dify 導入・実装パートナー
① 企業が導入パートナーを必要とするタイミング
Dify はノーコードプラットフォームではありますが、自社のみでの導入は比較的シンプルなユースケースに限られるのが実情です。
実際には、技術要件・スピード・中長期的な効果が重要になるにつれ、導入パートナーとの協業を選択する企業が多くなっています。特に以下のようなケースでは、外部パートナーの活用が有効です。
・社内に十分な IT/AI 人材がいない、または既存チームが運用業務で逼迫している場合
・既存システムとの 高度な連携や複雑なカスタマイズ が必要な場合
・大規模展開に向けて、パフォーマンス・コスト・スケーラビリティの最適化が求められる場合
・単体のチャットボットに留まらず、中長期的な AI 活用戦略として社内チャットボット構築を進めたい場合
② サービス
Dify チャットボットをワンストップで支援しています。コンサルティング、要件定義、設計、実装、運用まで、プロジェクト全体を包括的にカバーします。
投資リスクを抑えるため、2〜4週間の AI PoC(概念実証) を提供しています。特定のユースケースで実際に検証を行い、効果測定と ROI を確認した上で本格展開へ進むことが可能です。
また、ERP、CRM、Slack、Microsoft Teams など既存システムとの連携にも対応し、社内データを安全に活用・更新できるチャットボット環境を構築します。
高いセキュリティ要件を持つ企業向けには、AWS・Azure・GCP・オンプレミス環境での セルフホスト Dify 導入を実施。セキュリティ設定、監視(Monitoring)、CI/CD 構成まで含めて対応し、本番公開後も運用・保守サービス により、安定運用と継続的な最適化を支援します。
まとめ
効果的な AI チャットボットは、社員の業務スピードを向上させるだけでなく、サポート部門を定型対応から解放し、より付加価値の高い業務に集中させることができます。そのため、社内チャットボット構築は、デジタルトランスフォーメーション(DX)や AI 活用を進めるうえで、現実的かつ低リスクな第一歩となるケースが多く見られます。
シンプルな要件でまずは試してみたい場合は、Dify Cloud を利用して自社で Dify 社内FAQ チャットボットを始めることも可能です。一方で、要件が複雑化したり、他システムとの連携や大規模展開が必要になる場合は、初期段階から適切なアーキテクチャと導入ロードマップを設計することが不可欠です。これにより、将来的なコスト増加や運用リスクを回避できます。
こうしたケースにおいて、信頼できる導入パートナーとして伴走します。日本企業との協業実績 7 年以上を通じて、単なる AI/社内チャットボット構築にとどまらず、日本市場特有の業務文化、プロセス、品質要求を深く理解しています。
戦略立案、ソリューション設計、導入、運用最適化まで一貫して支援し、検証止まりではなく、継続的な価値を生み出す AI チャットボットの実現をサポートします。
Dify 社内FAQ チャットボットについてのご相談は、Miichisoft までお気軽にお問い合わせください。設計、システム連携、導入・長期運用まで、貴社の状況に合わせてご提案いたします。
よくある質問(FAQ)
Q1:プログラミングの知識がなくても社内チャットボット構築は可能ですか?
A1:はい、可能です。 Dify は、プログラミング経験のないユーザー向けに設計されたノーコードプラットフォームです。 直感的なドラッグ&ドロップ型の UI により、資料をアップロードし、自然言語で指示を書き、テストして公開するだけでチャットボットを作成できます。 すべて Web 画面上で完結し、コードを書く必要は一切ありません。
Q2:社内チャットボット構築にはどのくらいの時間がかかりますか?
A2:基本的なチャットボットであれば、必要な資料が揃っていれば 2~4 時間程度で構築可能です。目安は以下のとおりです。
・初期登録、API 設定、画面操作の確認:約 30 分
・資料のアップロード・処理:約 1~2 時間
・アプリ作成、プロンプト設計、各種設定:約 1 時間
・テスト・微調整:約 30 分
ワークフロー連携や高度な機能を含む場合は、1~2 営業日程度かかることもあります。
Q3:チャットボットは日本語を理解できますか?
A3:はい。非常に高い精度で対応できます。GPT-4、Claude 3、Gemini などの最新 AI モデルは、日本語に優れた対応力を持っています。
特に、Claude 3.5 Sonnet や GPT-4 は、日本語の文脈理解や表現処理に強く、社内チャットボット構築に適しています。
精度を高めるためには、以下の点を推奨します。
・学習・参照する資料は 正確な日本語で記載する
・プロンプト(指示文)も 日本語で統一する
・丁寧語だけでなく、略語やカジュアルな日本語表現(スラング)でもテストする
実際の利用環境では、必ずしも全員が正しい日本語で質問するとは限らないため、テスト段階で幅広い表現を確認することが重要です。
Q4:運用・保守のために開発者を雇う必要はありますか?
A4:必ずしも必要ではありません。日常的な運用作業の多くは、技術的な知識がなくても対応可能です。
例えば以下の作業は、非エンジニアでも行えます。
・資料の更新(新規ファイルのアップロード/不要ファイルの削除)
・プロンプトの修正(回答ルールや文言の調整)
・利用状況の確認(利用状況分析の閲覧)
・会話ログのエクスポート
一方で、以下のようなケースでは 開発者の関与が必要になります。
・API やデータベースなど、複雑なシステム連携
・要件に合わせた カスタム UI/UX の開発
・セルフホスト 環境での Dify 導入・運用
・深い技術的トラブルの調査・対応
Q5:社内データが外部に漏れることはありませんか?
A5:導入方式によって異なります。 Dify Cloud を利用する場合、データは Dify のサーバー上で 暗号化して保存され、GDPR をはじめとする国際的なセキュリティ基準に準拠しています。ただし、OpenAI や Anthropic などの AI プロバイダーが推論処理のためにデータへアクセスする可能性があります。
一方、セルフホスト(オンプレミス)構成では、すべてのデータが 自社サーバー内に保存され、セキュリティを 100%自社でコントロールできます。 銀行、医療、公共機関、防衛関連など、機密性の高いデータを扱う企業に適した構成です。
Q6:月額費用はどの程度かかりますか?
A6:費用は主に 以下の 3 つの要素で構成されます。
Dify 利用プラン
・Cloud Free プラン:月 200 クレジット(検証・トライアル向け)
・Cloud Professional プラン:月額 59 米ドル(小〜中規模企業向け)
・セルフホスト 構成:ソフトウェア利用料は無料(※サーバー/クラウド利用費は別途)
AI モデル利用料金(目安)
・GPT-3.5 Turbo:1,000 トークンあたり 約 0.002 米ドル(低コスト)
・GPT-4 Turbo:1,000 トークンあたり 約 0.01 米ドル(高精度)
・Claude 3.5 Sonnet:1,000 トークンあたり 約 0.003 米ドル(バランス型)
埋め込みコスト
・OpenAI text-embedding-3-small:1,000 トークンあたり 約 0.0001 米ドル
全体コストに占める割合は非常に小さく、実運用への影響はほとんどありません。





